一般社団法人 西宮市歯科医師会

歯周病について 「歯周病の治療」
廣川 正明
 歯周病は生活習慣病ですから、ご自身の生活習慣たとえば歯ブラシの仕方、食生活、歯ぎしり、喫煙、ストレス等の不適切な生活習慣改善の努力が必要です。糖尿病は歯周病を悪化させますし、歯周病も糖尿病に影響します。歯周病の治療には是非とも患者さん自身の理解と協力が必要なのです。
 歯周病は10歳代の若者でも60%近くが歯周病のかかり始めである歯肉炎になっていると言われています。また35歳以上の7割の方が歯周病でそのうち1割の方が重症だとも言われております。そして歯周病は「サイレント ディジィーズ(沈黙の病)」と言われるように初期のころには自覚症状が少ないわけです。
 そのため歯科医院に来院されたときの症状は、歯肉から血が出る、水がしみる、歯肉が腫れて痛い、ひどくなりますと、ズキズキ痛い、噛めないなどの症状で来られるわけです。


Q:そのときにはどんな治療をされるのですか

A:最初の処置としては応急処置になりますが、歯科医の側では出血、腫れ、痛み、噛めないなどの症状に対する処置を行います。すなわち軽度の歯肉出血であれば歯の汚れを取り正しいブラッシング指導を行うことになります。腫れがひどい場合には、切開をして膿を出したり、抗生物質・鎮痛剤を処方します。痛みがあればその歯の周りに詰め物をしてしみないよいうにしたり、痛みがひどい場合は、歯の神経をとることもあります。歯が動いて噛めないときは、歯を少し削って、噛み合わせを調節したり、歯の動きを止めるために仮に数本の歯を固定します。しかしこれらはあくまで応急処置で、歯周病の根本的な治療ではありません。ここが虫歯の治療と違うところです。


Q:それでは具体的に歯周病治療はどのようにするのですか

A:歯周病の治療ですが、まず病態から言いますと、磨き残しがありますと、歯垢となり歯と歯肉の境目に溜まりまして歯肉溝(歯周ポケット)ができます。さらに進みますと歯石になったり炎症が進みますので、歯ブラシではますます取れなくなります。それで歯科医院ではまず原因であるプラーク(歯垢)や歯石を除去(スケーリング)するような処置をいたします。さらに歯垢や歯石がつかないようにブラッシングの指導をします。これをプラークコントロールと言いますがここから治療がスタートします。


Q:歯周病は、歯肉炎と歯周炎とに分けられるようですがそれぞれに治療の仕方が違うのですか

A:歯肉炎は歯周病の始まりで歯肉に限局して炎症が起こっています。歯槽骨(歯肉を支えている骨)には破壊吸収がないことが歯周炎と大きくちがいます。歯と歯肉の境目の溝から細菌が侵入しますのでその部分の汚れを取ることが大切になります。またその部分に歯垢がつかないように正しくブラッシングしていただきます。プラークはポケットの中に入ってしまいますと歯ブラシだけでは取り除けなくなりますので歯科医師・歯科衛生士は機械を使ってきれいに取り除きます。その後、患者さん自身での歯磨きによって汚れがつかないようにすることが大切になります。そういう意味からも定期的な来院が必要です。ここで勘違いされてはいけないのですが、歯を磨かねばならないからといってゴシゴシと力を入れて磨きますと歯と歯茎の境目に近い部分にくさび状の欠損をおこしまして、水がしみたりするいわゆる知覚過敏症を引き起こすこととなります。歯は磨いても歯茎はマッサージをするようなイメージで磨いたらいいかと思います。
 歯周炎になりますと歯肉炎よりさらに症状が進み、歯槽骨が破壊されます。これは軽度、中度、重度に分けられますが、軽度の歯周炎では歯周ポケットが3?5mm、中度では4?7mmで歯根の半分まで歯槽骨が破壊された状態となります。重度になりますとポケットが6mm以上となり歯根の半分以上歯槽骨が破壊され、この状態になりますと歯がかなり動くようになります。治療ですが、歯肉炎と同じようにプラークコントロールが大切なのですが、歯槽骨の破壊があるため歯と歯の間がすいてきますから歯ブラシだけではなく、歯間ブラシの使用も必要です。歯周ポケットが3mm以上になりますと歯ブラシだけで汚れが取れませんから超音波によって汚れを取ったり、歯周ポケット掻爬といって細菌感染した深い部分の歯石を麻酔を使って取ります。更に重度になりますと歯周外科処置と言って、外科的に歯肉を切開して隠れて見えなかった部分の歯石や感染している歯周組織を取り除いて治します。この時には歯の動揺もありますので動きを止めるために固定して噛み合わせの調整をすることになります。いずれにしましても歯肉の部分を正常にし、歯周ポケットを無くすことによりそこに歯垢が溜まらなくなることで炎症を抑えることになります。ですが破壊された骨がもとに戻ることは困難なことで、あくまで歯周病の処置は進行を止め現在の状態を保つことが治療になります。


Q:歯周病を治療した後どんなことに注意すればいいのでしょうか

A:あくまで治療が済んでもそれは症状が改善された状態と考えていただきたいのです。ですから再発を起こさないための注意が必要です。まず1番目はプラークコントロール、正しい歯磨きをするということです。磨き残しがないように、またマッサージの作用もありますので血行を良くして細菌への抵抗力を増やします。
 2番目として歯ブラシ以外の器具も使用します。歯と歯の間には歯間ブラシを、歯の隙間の狭いところにはデンタルフロス(糸ようじ)をお使いください。
 そして3番目に生活習慣病ということから考えて、体によい食生活をする、口の中の健康はバランスよい食生活から、たとえばビタミンCは抵抗力を高めて歯肉出血を防ぐことができます。
 4番目に日常生活を見直す。タバコやストレスは免疫力を弱め、抵抗力治癒能力が弱くなります。以上のようなことに注意していただきたいと思います。そして定期検診を是非とも受けましょう。歯ブラシも磨き癖が出ますと3ヶ月ぐらいで磨き残しから歯石ができたり元の細菌相に戻りますので3ヶ月から6ヶ月に1回ぐらいは検診を受けてください。プラークコントロールは歯科医師と患者の双方に役割分担があります。歯肉表面と歯の手入れは患者さん自身による毎日の正しいブラッシングとフロッシング、歯間ブラシの使用、規則正しい生活習慣が必要です。歯肉の歯周ポケット内の手入れは歯科医師、歯科衛生士による清掃が必要です。