一般社団法人 西宮市歯科医師会

入れ歯とはどんなものですか?
親里 嘉之
Q:入れ歯(義歯)とはどういうものですか?

A:歯は親知らずを除いて、上下14本ずつで28本あります。それが何らかの原因で1本でも失うと、噛み合わせや見栄えに影響が出てきます。咀嚼、嚥下、発音や見栄えを回復するために、何らかの方法で補うことが必要になってきます。 それが入れ歯(義歯)です。したがって、入れ歯はその人だけに特別に誂えられた人工臓器と言えるでしょう。 入れ歯の種類や形態については、失った歯の数、部位などの条件により、噛む力をどこで受けるかなどを考慮して決定されます。

 欠損した歯の数が少数の場合には、噛む力を歯だけで支えるブリッジいう方法があります。 これは無くなった歯に隣接した数本の歯を削って、接着固定する、金属製もしくは歯を覆う金属冠を歯の色のセラミックでカバーした形の入れ歯です。 ブリッジのかたちにすると、取り外したりすることなく、使用感は非常に良好です。 しかしながら、噛む力を歯だけで支えるために欠損した歯の本数や噛み合わせの状態によっては、作製が困難な場合もあります。

 また、噛む力を残っている歯プラス歯茎で受けとめる、歯の欠損状態が1本から13本までの義歯を、部分入れ歯といいます。 これは歯に接着固定するのではなく、入れ歯の安定装置を残っている歯に設置して、口の中に落ち着かせるようになっています。 この安定装置には、一般的には、金属でできたバネ、すなわちクラスプをよく用いますが、特殊なアタッチメントという精密な装置、歯の根の上に装着する磁石を応用した装置などもあります。

 さらに、14本すべてがなくなると、総入れ歯ということになります。 総入れ歯の場合は、噛む力をすべて歯茎で受けることになります。


Q:入れ歯にした場合の利点と欠点とはどんなことでしょう?

A:取り外しが出来る部分入れ歯には、多くの利点と欠点があります。利点としては、歯の多様な欠損状況に対応して作製できることがあげられます。また残存歯の清掃についても、取り外しができるので行いやすくなります。 さらに作製時には、ブリッジと違って、残存歯をほとんど削らなくてもすむことも、大きな利点といえるでしょう。 欠点としては、義歯の装着による違和感や見栄えの問題、外して清掃しなければならないという負担が考えられます。
 14本の歯をすべて欠損すると、総入れ歯ということになります。 総入れ歯は安定源となる残存歯がないために、やわらかい歯茎の土手や頬や舌との接触状態によって、口の中で機能することになりますので、どうしても部分入れ歯よりは不安定になります。


Q:一本でも自分の歯を残していることが大切なんですね?

A:部分入れ歯を装着している患者さんには、先ほど申しましたように、必ず何本かの歯が残っています。 これらの歯を残存歯といいます。 通常、上顎・下顎に、おのおの14本の歯がありますから、欠損した歯が1本の場合から13本の場合まで、その間にはさまざまな状態が考えられます。さらに、14本すべてが無くなると、総入れ歯ということになります。 なるべく多数の歯が残っていることが,噛む力を多く残存歯で受けることができ、入れ歯そのものも小さくでき、入れ歯の安定や耐久性の向上、口腔内の違和感の減少と、有利にはたらきます。 したがって、その残存歯が虫歯などでなくなってしまうと、部分入れ歯を再製作しなければならなくなることもあります。


Q:高齢者にとってはどうでしょうか?


A:高齢者にとっては、虫歯という硬い組織に対しての病気よりも、歯の周囲の軟らかい組織の病気に注意しなければなりません。 つまり歯垢や歯石などの歯の汚れ、入れ歯周囲に付着した食べ物のカスによる汚れなどから発生する問題です。 口臭はもとより、歯の周囲の歯茎に発生する歯肉の炎症や、そこからの不愉快な出血や膿の排出、これが歯茎の病気として非常に怖い『歯周病』です。 これらの症状が進行すると、歯茎が腫れ、さらに歯の根の周囲の骨が溶けてきて、歯全体に動揺が起きてきます。 こうなると、もはや歯の寿命が尽きて使用できなくなり、抜歯をせざるを得ないという最終、そして最悪の段階に来てしまいます。 したがって、クラスプなどが架かっている歯と同様に、他の残存歯に対しても十分な配慮が必要です。 入れ歯を入れるとお口の中が、より複雑な形になり、汚れの付きやすい環境となりますので、いっそう清掃に気をつけていただかないと、口全体が不潔になり、残存歯の寿命を縮めかねません。 これでは、何のために入れ歯を作ったのか?ということになってしまいます。


Q:総入れ歯の場合は?


A:最終的に、すべての歯が全部無くなると総入れ歯になりますが、上顎はともかく下顎の総入れ歯は、入れ歯治療の中で一番難しいものといわれています。 なぜなら、入れ歯の粘膜面の面積が小さいこと、顎の開け閉め運動時に常に動くこと、さらに咀嚼・嚥下・発音の機能時に活発に運動する舌や頬と直接接していること、などの理由があるからです。 下顎においては、総入れ歯になる直前の状態であっても、残存歯が1本でもあることによって、部分入れ歯の安定感に大きく影響してきます。 したがって、残存歯を1本でも多く残すことが重要になってきます。
 入れ歯を使用することで、口の中の環境が不潔になることは、できるだけ避けるようにしなければなりません。 それには入れ歯の手入れが大切です。


Q:入れ歯の手入れ方法について教えてください。

A:理想的には、毎食後のたびに清掃するのが一番よいのですが、なかなか面倒くさく、外食などの機会もあり、現実的に難しいことかと思います。 日常の手入れとしては、最低一日に一回は清掃してください。 夜間、就寝前に歯を磨く時に、入れ歯も丁寧に清掃し、汚れを落とすようにします。

 それでは、夜間の就寝時には入れ歯をどのようにしておけばよいのでしょうか?
入れ歯の装着は、口の中の組織に対して、あくまでもストレスの元であると考えられます。 夜間、ご自身が休むときには、口も休ませるようにしたいものです。 歯茎を休ませないと、その上に入れ歯の跡がくっきりと残ることがあります。 自分自身は歯や口の中をきれいにし、入れ歯はきれいに清掃してコップの中の水の中にいれて休むようにしましょう。 このときに、水に市販の義歯洗浄剤を入れて使用することは、ブラシで取りきれなかった汚れや臭いを除去するのに効果があるかと思います。 なお、はずした入れ歯は必ず水の中につけておかないと、入れ歯のピンク色したレジン(アクリル樹脂)部分が変形する恐れがあります。