一般社団法人 西宮市歯科医師会

ご存知ですか?マウスガード
大家 正久
 皆さん、マウスガードというものをご存知でしょうか。本日は主にスポーツをされる方々やそのご家族に知っていただき、今後使っていただけるようになればと思い、紹介させていただきます。

Q:マウスピースなら知っていますが。ボクシングの選手が使っていますね。

A:そうですね。ボクシングではマウスピースと呼ばれていますが、マウスピースとマウスガードは同じものです。テレビや映画に出てくるボクシングのシーンで登場しますし、最も歴史も古いのでこの言い方が良く知られていますが、今日では、口の中を守るという意味からマウスガード、あるいはマウスプロテクターという呼び方が一般的です。
 当初ボクシング競技で使われだし、その後色々な競技に広まっていきました。
アメリカンフットボール、ラグビー、レスリング、ハンドボール、バスケットボール、野球、スキー、スケート、アーチェリー、ボート、自転車、水球、飛び込み など、格闘技をはじめ個人競技、団体競技を問わず、様々です。これらのうち、マウスガードの装着を義務付けられている競技だけでも、7種類(ボクシング、キックボクシング、空手、アメリカンフットボール、アイスホッケー、女子ラクロス、ラグビー)もあります。
 では、マウスガードとはどんなものかといいますと、上あごの歯ならび全体を覆う馬蹄形のもので、材質としては柔らかいプラスチックが一般的です。ただ柔らかいといっても少しだけ弾性のあるプラスチックというイメージですね。この材料は、熱いお湯など熱を加えれば変形するという性質を持っています。厚みは2ミリから4ミリ程度で、競技によって少しずつ違いますが、重さとしては軽いものです。


Q:マウスガードの目的と働きについて教えてください。

A:その目的は、口の中の組織を守ることです。マウスガードは外部からの強い力・衝撃を分散し、また吸収して和らげます。それにより、歯が折れたり割れたり、またほっぺたや舌が競技中に傷つくことを防ぎます。またあごの損傷を防ぎ、ひいては脳震盪の予防も期待できます。
 次に、マウスガードによって歯自身が怪我を引き起こすことを防ぐ、つまり歯を無害化するということが挙げられます。衝突によって歯のとがった部分が自分の唇や頬を突き破ったり、また衝突相手に裂傷を負わせるといった事故の可能性がありますが、マウスガードはこれを防ぎます。この歯を無害化する効果はたいへん大きいんですね。また歯の脱臼といいますが、衝撃により抜けてしまうことがあり、これにもマウスガードを装着していなければ抜けるはずの歯を、口の中にとどめておく事ができ、後で植えなおすときに成功率が高くなります。
 脳震盪の予防については、マウスガードを装着してかみしめていることにより、首から上が固定されるという効果があるためと考えられています。
 それともうひとつ、競技能力の向上ということが報告されています。マウスガードを装着してかみしめることにより、集中力が向上する、あるいは筋力が向上するというもので、例として、アーチェリー、競輪、アメリカンフットボールで実際に違いが示されています。また、野球では咬み合わせを工夫することで遠投能力(遠くへ投げる能力)が向上することは、はっきりしています。


Q:良いことずくめですね。何か欠点はありませんか?


A:強いてあげれば着用による不快感と、話しにくさでしょうか。また、はじめは少し呼吸がしにくくなるということもあります。ただ、不快感などは慣れにより、なくなっていくでしょうし、少し薄いものに作り変えることもできます。呼吸については自然に鼻での呼吸に替わっていくようです。


Q:このマウスガード、市販はされているのですか?

A:スポーツ用品店で市販されていますが、残念ながら今のところどの店にでもあるというわけではなく、どちらかというと少数です。
 市販のものは、はじめは平らなシートとして売られています。マウスガードの材料は、先ほど申しましたように熱で変形するという性質がありますので、これをお湯につけて柔らかくし、それを強く噛んで自分の歯型に合わせて形を作ります。その後余分なところをハサミで切り取って出来上がりです。誰でも手軽に作れます。
しかし、この市販品の場合、競技中に外れることもあり、また自分で合わせたときに咬み合わせにずれが起きてしまうこともあり、また比較的違和感が大きいといった欠点があります。
 そこでカスタムメイド、つまり自分の歯並びやあごの形に合わせてつくったマウスガードが必要になってくるわけです。カスタムメイドの場合、簡単には外れませんし、咬み合わせの変化も最小限にとどめることができます。


Q:カスタムメイドのマウスガードは歯医者さんに行けば作ってくれるのですか?

A:はいそうです。口の中の型を取って大体1〜2週間でできあがります。
 カスタムメイドの良さは、歯並びの良くない方などでは、よりはっきり出ます。たとえば犬歯が前へ出ているような場合には、市販のものではうまく覆い切れない場合もあります。この点でも問題はありません。また矯正治療中の方で、歯の表面にブラケットという金具を付けている場合には、マウスガードは必需品になると思います。
またカスタムメイドのマウスガードの寿命ですが、競技によって違いますが特に強くかみしめ続けない限りは1,2年あるいはそれ以上もつといわれています。


Q:さて、マウスガードを作るに当たっての歯医者さんでの治療費のことなんですが。

A:残念ながら保険の適用はされません。実費がかかりますので、かかりつけの歯科医院でご相談ください。
いずれにしましても、人との接触の機会のあるスポーツは当然のこととして、あらゆるスポーツでかみしめることがあると思いますので、マウスガードは欠かせないものであることがお分かりいただけたかと思います。今後、さらに普及することが予想されます。特に、スポーツを指導される方々に良くご理解いただき、外傷予防のために、広く取り入れていただければありがたいと考えております。